スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
月刊スポーツメディスン最新刊紹介
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SQ190.png 特集『特集 膝の問題とそのアプローチ』
──知識と経験から語る「現場」の問題
 
1.「膝関節のバイオメカニクスの重要性」
──膝ACL損傷予防の視点から
浦辺幸夫・広島大学大学院医歯薬保健学研究院 PT, PhD, JASA-AT, MA
        
2.「膝前十字靭帯再建術後のリハビリテーション」
吉田昌平・京都がくさい病院 スポーツリハビリテーション科理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー
 
3.「膝関節における腫れによる膝機能への影響」
吉田奈美・医療法人社団 昇英会 はちすばクリニック、
理学療法士

4.「膝の問題、とくに前十字靭帯について」
──知と実践のパイオニアであれ!
黒澤 尚・順天堂東京江東高齢者医療センター整形外科、順天堂大学特任教授、
はちすばクリニック

第15回 北九州肩関節研究会 教育講演会のご案内

講演のご案内です。

東北大学整形外科教授 井樋栄二先生を御招きして ご講演していただくこととなりました。

日時/2009年11月27日(金) 午後7時より

場所/ホテルニュータガワ  新館3F  月華
   
内容/特別講演:座長 内田宗志・産業医科大学整形外科
                  
演題「肩関節のバイオメカニクス」

講師:井樋栄二先生・東北大学大学院整形外科分野
              
参加対象/理学療法士、作業療法士、トレーナー、学生、鍼灸師の方

尚、服装は講演会に適切な服装でのご来場を御願いいたします

内田宗志
産業医科大学整形外科 スポーツ関節鏡グループ
日本体育協会公認スポーツドクター
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第60回東京肩を語る会

股関節鏡は肩関節鏡に景色がよく似ています。
操作は奥が深いため 股関節鏡の方が難易度が高い感がありますが、肩関節鏡を卓越したヒトはスムーズに 股関節鏡の手術ができると思います。

今回は病態と 股関節鏡の工夫、とくに股関節唇縫合術の手法、Pearl and Pitfallについてお話したいと思います。

肩関節を傷めるスポーツ選手は股関節が硬い場合や、傷んでいることがあります。

肩関節のスコピスト(関節鏡のスペシャリスト)で股関節に興味のあるかた。股関節痛の選手を診療しなければならない先生。
股関節痛で困っている方を一緒に勉強して、治しませんか?
*詳細は下記参照

内田宗志
産業医科大学整形外科 スポーツ関節鏡グループ
日本体育協会公認スポーツドクター




東京肩を語る会 (代表世話人 松戸病院整形外科 三笠元彦先生)

開催場所:エーザイ株式会社 別館 (地下鉄丸の内線 茗荷谷駅前)K406号 会議室

日時:10月26日月曜日、19:00~20:30     
    私の講演は 19:50~20:30を予定しております。

内容:
講演1「鎖骨骨折の治療」森石丈二先生(船橋整形外科 部長) 

講演2「アスリート股関節痛femoroacetabular impingement (股関節インピンジメント) に対する股関節鏡視下手術」 内田宗志(産業医科大学整形外科)
股関節痛の原因となるスポーツ外傷 障害の鑑別診断

スポーツや若年者のかたで股関節痛を来すことは稀では有りません。

股関節痛があり レントゲン写真で異常がないと言われても、消炎鎮痛剤やリハビリやGroin Pain Syndromeの予防プログラムなどで治癒しない場合は、原因を詳細に調べる必要が有ります。

ただ単にリハビリだけをして時間を浪費して症状が続く場合には、詳細な診察をして診断をしなければなりません。

股関節周辺の疼痛の原因としては

関節のなかの病態 関節内病変
関節のそとの病態 関節外病変とに大きく分かれます。

関節内の病態は主に関節鏡で診断がつき 治療することができますが、関節外の病態は 関節鏡で治せるものと治せないものとがあります。

【関節内病変】
1. 関節唇損傷 *
2. 遊離体   *
3. 股関節インピンジメント (FAI)*
4. 関節包弛緩 *
5. 輪状靭帯損傷 *
6. 関節軟骨損傷 *

【関節外病変】
1. 腸腰筋腱炎 *
2. 腸脛靭帯炎
3. 中臀筋腱 小臀筋腱炎
4. 大転子滑液包炎 *
5. 疲労骨折
6. 内転筋肉離れ
7. 梨状筋症候群 *
8. 仙腸関節病変

【股関節疑似病変  Hip Mimicker】
恥骨結合炎
スポーツヘルニア
アスリート鼡径部痛

*印で記した疾患は関節鏡視下(関節用の内視鏡)にて治療することができます。

 関節内病変と関節外病変は 通常よく似たような痛みを訴えることが多く、診断が難しい場合があります。詳しい病歴と理学所見をとることが大切です。

たとえばFAI(股関節インピンジメント)と内転筋肉離れとの鑑別
 両方とも内転筋の疼痛と圧痛があります。
 肉離れでは 一発のキックなどで肉離れは発症します。肉離れの部位に限局して激しい圧痛がありますが、その他の圧痛はない場合が多いです。
それに比して、FAIは 内転筋だけでなく、腸腰筋腱、大転子、など関節周辺の様々な部位に圧痛が多いです。
 一番の鑑別はスペシャルテストといわれる徒手検査です。

anterior impingement testが陽性であるか
このテストは 股関節90°屈曲 膝90°屈曲で 検者が股関節方向へ大腿骨を圧迫しながら、股関節を最大内旋します。そのときにクリックや疼痛が誘発され、大腿骨頭が臼蓋にうまくくるくると弧をえがいてまわらないければ陽性と判断します。

FAI 関節唇損傷などの関節内病変で陽性となりやすいテスト
 FAIや関節唇損傷のかたは、このテストの感受性が90%といいます。

FABER test  Figure of four or flexion abduction external rotation
 患者を仰臥位に寝かせて股関節を外旋・屈曲・外転させて、診察台から膝までの距離を測定して 左右差があり、疼痛が誘発されれば陽性。

 通常のMRは、感受性60%、特異度40%程度ですので、通常のMRでなにもないと 医師にいわれる場合が多いです。
 この場合は、リハビリや消炎鎮痛剤による保存療法を続けます。それでも治らない場合には、さらなる検査をすることをおすすめします。。

 MRで光る造影剤(ガドリニウム)を レントゲン写真で光る造影剤と一緒に混ぜて 股関節内に約20ml 注入します。その後MRをとります。
 MR arthrography(関節造影後MR)は、感受性90%、特異度100%です。

なぜ診断が違うか
 皆さん水槽の中の水草をご想像ください。水が入っていなければ水草がどんな形をしているかわかりませんが、水が入っているとその形がわかります。関節内の組織も造影剤をいれることによって、その解剖学的特徴や損傷されている組織に造影剤が入り込むことによって、損傷されているか否かがより明らかになります。

スポーツヘルニアとFAI
 スポーツヘルニアの場合は 急に痛みがでる場合が多いです。通常anterior impingement testやFABERは陰性です。
 鼡径ヘルニアのように脱出している場合がすくなく、またヘルニオグラフィーや超音波でもわからない場合が多く、確定診断は難しいです。
 10年以上前は手術をしていましたが、現在は 消炎鎮痛剤やコアートレーニングなどを中心としたリハビリで良くなることが多いですが、症状が続いた場合には、腹腔鏡視下手術が必要になる場合が有ります。

スポーツヘルニアと FAIが合併していることもあり、アメリカのBryan Kellyが報告しています。

股関節鏡視下手術を行っていると徒手検査を行って診断し、今までの診察や検査に答え合わせをしていますので、より正確な診断がつくように日々努力しています。

内田宗志
産業医科大学整形外科 スポーツ関節鏡グループ
日本体育協会公認スポーツドクター

アスリートの股関節痛 Femoroacetabular Impingementに対する股関節鏡視下手術 

 小職は、アメリカのSteadman Hawkins Clinic の股関節鏡視下手術年間400例の症例数を誇るDr Marc J Philipponを訪問し、10日間手術外来見学ならびにキャダバートレーニングでご指南をうけました。

 股関節鏡視下手術の適応、アスリートに多い股関節インピンジメント(Femoral Acetabular Impingement FAI)の診断、股関節痛の原因となる他病変との鑑別、治療方法の立案と関節鏡視下手術の実際、さらにメディカルリハビリテーション、アスレチックリハビリテーションを習得しました。

 アメリカの現状と、帰国後実際に行っている、FAI診断から手術、メディカルリハビリからアスレチックリハビリまでの治療をご紹介いたします。

 アスリートの股関節痛は、診断が明確にされずに、保存的治療に抵抗し、治療に難渋することも少なくなくありません。股関節痛の原因としてはTable1にあるような疾患外傷があげられます。

 なかでも股関節インピンジメント(Femoral acetabular impingement 以後FAI)はGanzらが2001年(1)に報告して以来、股関節痛を引き起こすインピンジメント病態として、診断治療が進歩してきました。

 FAIは、大腿骨骨頭から頸部のオフセットの骨形態異常からインピンジメントを引き起こすCAM impingement、寛骨臼蓋の骨棘や形態異常によるPincer Impingementからなり、両者が合併していることが約86%と報告されています。(2)
 両者がインピンジすることにより、関節唇損傷を来たし、次第に軟骨損傷をきたします。

[診断へのアプローチ]
病歴:まず詳細な病歴を聴取することが大切です。
活動制限として、中等度から明らかな疼痛、重労働時の疼痛、15分以上歩行すると疼痛、座位からの立ち上がりでの疼痛を訴えます。
運動制限としては、ランニング ジャンピング スタートとストップ動作での疼痛

[理学所見]
スペシャルテスト
FABER test(Flexion-Abduction-ER ) FAIの97%が陽性。
Anterior Impingement Test  FAIの90%が陽性。

[画像診断]
単純レントゲン写真: 
立位正面およびクロステーブル軸写にて、PincerならびにCAMの評価を行います。CE 角を測定して、臼蓋形成不全の有無、Cross-Over sign で臼蓋の後捻の有無を確認します。クロステーブル軸写では、アルファ角(正常値<50°)を測定し、CAM impingementの有無を確認します。

MRI:
関節唇損傷の評価は、1.5テスラ単純MRIで、偽陰性が80%と報告されており、有用ではありません。1%ガドリニウムを股関節内に注入した後撮影する MR arthrogramが偽陰性率が8%にまで下がり、非常に有用です。 今まで、原因のわからなかった股関節痛で Groin Pain Syndromeの範疇として考えられ、治療に難渋した症例のなかにこのような病態が含まれている場合があります。

[治療]
NSAIDやリハビリによる保存療法に、3カ月以上抵抗する場合には、股関節鏡視下手術を考慮します。

股関節鏡の実際
 フラクチャーテーブルで、牽引を行い、前外側ポータルと前方ポータルを作成して、寛骨臼と骨頭の間の鏡視を行います。関節鏡視下に関節唇損傷を確認し、Pincer Impingementがあれば、関節唇を寛骨臼からはずし、Rim Trimingを行った後、関節唇を再縫着します。

 次に牽引をはずし、関節包内関節外鏡視、すなわち大腿骨頭から頸部のオフセット部分を鏡視します。CAM impingementが存在すれば、突出した骨軟骨をアブレーダーバーで削り、骨軟骨形成(osteochondplasty)を行います。

 FAIに対する 関節鏡視下手術は、この一連の術式によって、安定した成績が得られるようになってきています。プロスポーツ選手のFAIに対しても、積極的に手術を行うようになり、45人のプロスポーツ選手のFAIに対して関節鏡視下手術を行い、93%が元のレベルに復帰したと報告しています(2)。

 わが国では、診断学が普及しておらず、また股関節鏡視下手術はテクニカルディマンドな手術であり、一般的ではありません。

 スポーツ整形外科医の視点からみて、股関節痛で スポーツパフォーマンスが低下している選手には、有用な診療アプローチの一つとして期待されます。

 詳しくは動画も掲載しています。私のブログまで。

1)Ito, K, Minka, Leunig, M, Werlen, S, Ganz, R. "Femoroacetabular impingement and the cam-effect. A MRI-based quantitative anatomical study of the femoral head-neck offset." J Bone Joint Surg B 2001 83(2) 171-6
2) Philippon, MJ, Stubbs, AJ, Schenker, ML, Maxwell, RB, Ganz, R, Leunig, M "Arthroscopic management of femoroacetabular impingement: osteoplasty technique and literature review Am J Sports Med 2007 35 (9) 1571-80.
3) Philippon M , Schenker M, Briggs K and Kuppersmith D
Femoroacetabular impingement in 45 professional athletes: associated pathologies and return to sport following arthroscopic decompression. Knee Surg Sports Traumatol Arthros 2007 15(7) 908-14


内田宗志
産業医科大学整形外科
日本体育協会公認スポーツドクター
前に紹介しました内田宗志先生から、メールが寄せられました。「スポーツ整形外科医のブログ」として掲載していきます。

■野球メジャーリーグで増えている股関節痛による故障者
New York Times (5月)で、股関節故障者が年年増加していると記載されていました。

ヤンキースのアレックス・ロドリゲス、フィリーズのチェイス・アトリー、投手マイヤー、 メッツのカルロス・デルガドといったメジャーリーグでも一流の選手が、股関節の故障で戦列を離れる事態が相次いでいます。、アトリーのチームメートであるブレット・マイヤーズ投手が、やはり股関節の手術を受けることになりました。

私の股関節鏡視下手術のお師匠さんであるMarc J PhilipponがAロッズやマイヤーズの手術をされました。

股関節の故障が原因で故障者リスト入りした選手は、
2007年が20人、
2008年が34人、
2009年は四分の一が終わった時点ですでに13人。

最近になって急激に増えている。これは10年前には考えられなかったことだとニューヨーク・タイムズが取り上げています。

プロスポーツ選手のあいだで、ACL損傷など、ヒザの怪我が増えた結果、トレーナーは脚の強化に力を入れてきました。スポーツ医学の専門家は、ヒザの怪我を減らすためのこの取り組みが、股関節を脆弱にしているのではないかと疑問視しています。

野球、フットボール、ホッケーなどの選手のリハビリプログラムを見ているトレーナーは「故障箇所だけを見て、全体の機能やバランスなどを見ていないのかもしれない。ここ数年、股関節の故障は、かつてないほど増えている」といっています。

一方、MRIなど画像診断の精度が上がったため、小さな故障も確認できるようになったことや、小さいときからスポーツを始める子供が増えていて、骨の形成に悪影響があることを指摘する専門家もいます。

確かに大腿骨頸部から頭部の出っ張りCAM LESIONなどは、成長軟骨を中心にでっぱってくるので、その影響があるのかもしれません。

トレーナーや整形外科医の多くは、ヒザの強化が股関節に影響しているとする仮説にショックを受けているが、トレーニング方法に問題があるとする見方に「以前から股関節の故障はあった。ただ、昔は今ほど診断がつかなかっただけだ」と反論する医師もいます。

私もそのように感じますが、子供のときには 一つのスポーツに特化するだけでなく、いろいろな動きをとりいれたほうがよいのではないかと思います。

日本でもわからないだけで 骨形態の異常があり、股関節痛の原因になっているひとが 私の外来に来られます。

近年の選手は身体が大きくなり、その分、足腰に負担がかかることや、若年からスポーツを始め、骨の形成が不十分なまま運動を続けるなど、いくつか原因は考えられると思います。

スポーツ医学の専門家は「リトルリーグでは投げ過ぎによるヒジの怪我が問題になり、注意するようになったが、股関節については、まだ研究されていない」と、NEW YORK のDr Bryan Kellyはいっていたそうです。

日本でもこのような研究が必要であると考えており、股関節痛を呈して手術にならないようにするための予防の研究が必要だと考えています。

野球による股関節痛で困っている方、日本でも治療が可能です。
正確な診断、精密かつ正確な手術、系統だったリハビリテーションがキーポイントとなります。

詳しくは私のブログで。

内田宗志
産業医科大学整形外科
日本体育協会公認スポーツドクター