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         スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
月刊スポーツメディスン最新刊紹介
月刊スポーツメディスンNo.214(2019年10月号)←詳細&購入はここ!
SQ214表紙画像サイズ
『特集 ファンクションを見る眼」
1.「「ファンクションを見る眼」を語る」
川野哲英・FTEX Institute 代表、はちすばクリニック副院長
 
2.「ファンクショナル・テーピングの考え方と、実施に際しての機能評価、実際の方法の概要」
小林寛和・日本福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻

3.「機能的足底板(Functional Orthotics Insole:FOI)」
原田昭彦・一般財団法人弘潤会 野崎東病院 アスレティックリハビリテーションセンター リハビリテーション部課長、PT、JSPO-AT

4.「ファンクショナル・エクササイズの基本的な考え方、運動・関節運動の捉え方」
川口浩太郎・PT、PhD、JSPO-AT、兵庫医療大学リハビリテーション学部 FTEX Institute FEXリーダーズ・ユニット


股関節痛の原因となるスポーツ外傷 障害の鑑別診断

スポーツや若年者のかたで股関節痛を来すことは稀では有りません。

股関節痛があり レントゲン写真で異常がないと言われても、消炎鎮痛剤やリハビリやGroin Pain Syndromeの予防プログラムなどで治癒しない場合は、原因を詳細に調べる必要が有ります。

ただ単にリハビリだけをして時間を浪費して症状が続く場合には、詳細な診察をして診断をしなければなりません。

股関節周辺の疼痛の原因としては

関節のなかの病態 関節内病変
関節のそとの病態 関節外病変とに大きく分かれます。

関節内の病態は主に関節鏡で診断がつき 治療することができますが、関節外の病態は 関節鏡で治せるものと治せないものとがあります。

【関節内病変】
1. 関節唇損傷 *
2. 遊離体   *
3. 股関節インピンジメント (FAI)*
4. 関節包弛緩 *
5. 輪状靭帯損傷 *
6. 関節軟骨損傷 *

【関節外病変】
1. 腸腰筋腱炎 *
2. 腸脛靭帯炎
3. 中臀筋腱 小臀筋腱炎
4. 大転子滑液包炎 *
5. 疲労骨折
6. 内転筋肉離れ
7. 梨状筋症候群 *
8. 仙腸関節病変

【股関節疑似病変  Hip Mimicker】
恥骨結合炎
スポーツヘルニア
アスリート鼡径部痛

*印で記した疾患は関節鏡視下(関節用の内視鏡)にて治療することができます。

 関節内病変と関節外病変は 通常よく似たような痛みを訴えることが多く、診断が難しい場合があります。詳しい病歴と理学所見をとることが大切です。

たとえばFAI(股関節インピンジメント)と内転筋肉離れとの鑑別
 両方とも内転筋の疼痛と圧痛があります。
 肉離れでは 一発のキックなどで肉離れは発症します。肉離れの部位に限局して激しい圧痛がありますが、その他の圧痛はない場合が多いです。
それに比して、FAIは 内転筋だけでなく、腸腰筋腱、大転子、など関節周辺の様々な部位に圧痛が多いです。
 一番の鑑別はスペシャルテストといわれる徒手検査です。

anterior impingement testが陽性であるか
このテストは 股関節90°屈曲 膝90°屈曲で 検者が股関節方向へ大腿骨を圧迫しながら、股関節を最大内旋します。そのときにクリックや疼痛が誘発され、大腿骨頭が臼蓋にうまくくるくると弧をえがいてまわらないければ陽性と判断します。

FAI 関節唇損傷などの関節内病変で陽性となりやすいテスト
 FAIや関節唇損傷のかたは、このテストの感受性が90%といいます。

FABER test  Figure of four or flexion abduction external rotation
 患者を仰臥位に寝かせて股関節を外旋・屈曲・外転させて、診察台から膝までの距離を測定して 左右差があり、疼痛が誘発されれば陽性。

 通常のMRは、感受性60%、特異度40%程度ですので、通常のMRでなにもないと 医師にいわれる場合が多いです。
 この場合は、リハビリや消炎鎮痛剤による保存療法を続けます。それでも治らない場合には、さらなる検査をすることをおすすめします。。

 MRで光る造影剤(ガドリニウム)を レントゲン写真で光る造影剤と一緒に混ぜて 股関節内に約20ml 注入します。その後MRをとります。
 MR arthrography(関節造影後MR)は、感受性90%、特異度100%です。

なぜ診断が違うか
 皆さん水槽の中の水草をご想像ください。水が入っていなければ水草がどんな形をしているかわかりませんが、水が入っているとその形がわかります。関節内の組織も造影剤をいれることによって、その解剖学的特徴や損傷されている組織に造影剤が入り込むことによって、損傷されているか否かがより明らかになります。

スポーツヘルニアとFAI
 スポーツヘルニアの場合は 急に痛みがでる場合が多いです。通常anterior impingement testやFABERは陰性です。
 鼡径ヘルニアのように脱出している場合がすくなく、またヘルニオグラフィーや超音波でもわからない場合が多く、確定診断は難しいです。
 10年以上前は手術をしていましたが、現在は 消炎鎮痛剤やコアートレーニングなどを中心としたリハビリで良くなることが多いですが、症状が続いた場合には、腹腔鏡視下手術が必要になる場合が有ります。

スポーツヘルニアと FAIが合併していることもあり、アメリカのBryan Kellyが報告しています。

股関節鏡視下手術を行っていると徒手検査を行って診断し、今までの診察や検査に答え合わせをしていますので、より正確な診断がつくように日々努力しています。

内田宗志
産業医科大学整形外科 スポーツ関節鏡グループ
日本体育協会公認スポーツドクター

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