FC2ブログ
 
         スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
月刊スポーツメディスン最新刊紹介
月刊スポーツメディスンNo.214(2019年10月号)←詳細&購入はここ!
SQ214表紙画像サイズ
『特集 ファンクションを見る眼」
1.「「ファンクションを見る眼」を語る」
川野哲英・FTEX Institute 代表、はちすばクリニック副院長
 
2.「ファンクショナル・テーピングの考え方と、実施に際しての機能評価、実際の方法の概要」
小林寛和・日本福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻

3.「機能的足底板(Functional Orthotics Insole:FOI)」
原田昭彦・一般財団法人弘潤会 野崎東病院 アスレティックリハビリテーションセンター リハビリテーション部課長、PT、JSPO-AT

4.「ファンクショナル・エクササイズの基本的な考え方、運動・関節運動の捉え方」
川口浩太郎・PT、PhD、JSPO-AT、兵庫医療大学リハビリテーション学部 FTEX Institute FEXリーダーズ・ユニット


お正月気分も消え、あっと過ぎてしまう1月の終わり。今月はまだ残っているであろうお餅を使ったレシピ。その前に、こういうお正月もあったのですというお話から。

父の正月
(文・料理/大仁浩子・「もも家」店主、イラスト/横江節子・神戸市垂水区在住)

CCF20120126_00000.jpg

 故郷の小さなホームに降り立つと、日本海からの霙まじりの風が闇の底から吹きつけて来た。今日は大晦日。こうして、父とお正月を過ごすのは今年で8年目。母が亡くなってからのことだ。しかも大晦日に帰省するのは初めてのこと。神戸の婚家先は街では珍しい四世代同居の大家族で、お正月は目出度さなどはどこへやら。

 長男の嫁として、煩わしいだけの催し事だった。電話で「たまには、お父さん、お母さんと新年を迎えたいわ」と提案しても、父は「嫁として自分の務めを果たすように」と、お正月の帰省を一度も許さなかった。ところが、その父が、母が亡くなって一変した。秋が終わろうとする頃から、お正月は、いつ帰ってくるのかと、しきりに尋ねるようになった。

 町暮らしといっても、故郷は田舎町。お正月は申し合わせたように、誰もが家に引きこもって暮らす。通りに人影もなく、近所の小商いの店は廃業して数年前からシャッターが降りたまま。油揚げ1枚、豆腐一丁買うのもままならない。それにお正月の頃には大陸からの北北西の風が身を切るほどの冷たさで吹き始める。お正月は、一人暮らしの父にとって厳しい日常の暮らしになる。

 バスを降りて、マフラーを首にグルグル巻き、風に逆らいながら、ようやく父の家にたどり着く。帰りを待ちわびるように、門灯にも玄関の内にも電灯がともり、軒には注連飾りの黄色い橙がゆずり葉の陰からのぞいていた。玄関のガラス戸は建てつけがよくない上に重く、かなりの音を立てて開けるのだが、耳の遠い父には届かない。「ただいま。戻りました」と声をかけても、大きな音でテレビのニュースが居間から流れているばかり。障子を開けると、父はやっと気配に気づき「おお!帰ってきたね。待っていたよ。早速、年越しそばを祝って、ゆっくり年を迎えよう」と一気に弾んだ声で言った。

 荷物を慌ただしく解いて、台所へ立ち冷蔵庫を開ける。何もない。これといってお正月らしい食材が。一体、どうしてお節を作ればいいのだろう。例年なら近所の仕出し屋さんからお重が届き、妹や弟が年賀代わりの食材を届けてくれていたのだが。それもない。そこへ父が入ってきて、こう言った。

「今年は、これで支度をして下さい」。

 床に転がっていた新聞紙の包を開けると、大根、里芋、カブ、青ネギ、春菊。父がこつこつと育てた野菜が出てきた。

「これでお正月をするの」と半ばあきれて言うと、父は「あぁ、別に正月だといって特別の贅沢をすることはないよ。あなたは料理人。どうぞ工夫して食べさせて下さい」と事もなげに言う。

 仕方なく、食材の総点検をし、父と「紅白歌合戦」を大きなボリュームで聞いた。

 明けて正月。お節作り。カブと人参で日の出雑煮。ハンペンを摺り玉子と合わせ、海苔を巻き込んで焼いた鳴門。緑が鮮やかなネギのヌタ。酢味噌には煎ったイリコと白ごまをたっぷり入れる。これは父の好物。イカの代わりに白蒲鉾を入れたのはご愛嬌。到来物の鴨の燻製は柚子胡椒で。庭の夏みかんを絞って、わかめと大根の酢の物。春菊と干しエビ、チリメンジャコのかき揚げ。これで彩りと品数だけは揃った。それを母が特別の時に使っていた古伊万里や染付の皿に盛った。

 それを一見した父の華やいだ顔といったら。

「おお!これはこれは。早速、お屠蘇で祝いましょう」と床の間に飾った屠蘇器を運んできた。三つ重ねの盃で、年下の者(といってもすっかり成長した私の娘)が小盃、私が中盃、父が大盃で金箔入りの清酒を酌み交わした。

 母がいた頃は、屠蘇散のお酒だった。それを盃に受けて、私達子供四人は一年の抱負を宣言するのが習わし。

「受験の年は、結構、プレッシャーだったわ。弟は『いつも元気でがんばります』でパスしてもらっていたのよね」と懐かしく言うと、「では、今年は僕の思いを書いたものを渡しましょう」と父が言った。そして床の間に積んであった長い桐箱を抱えて戻ってきた。

 父が箱から取り出したものは長尺の掛軸。群青色の地には銀蘭の唐草模様で表装してあり、中央には父の筆で漢詩が次のように書かれていた。中国宋時代の司馬温公の詩句だという。

積金以遺子孫 子孫未必能守 積書以遺子孫 子孫未必能讀 不如積陰徳於 冥冥之中以為 子孫長久之計

 父の解説によると「お金を遺しても子孫はそれを守れない。それでは本を積んで読むようにと遺しても、子孫は読んで学問としない。それならばと、温公は考えついたのだろう。人目につかないように陰徳を積んでおくことが、子孫長久の計りごとだとね。僕は、四人の子供たちに続く子孫が幾久しく栄えていくためにも、又、この国難の日本が再び立ち上がるためにも、それぞれが陰徳を積むことだと感じたので、字を練習しました。家訓として遺そうと、軸装しました」と一息に言った。

 私は急いで白紙を探し、耳の遠くなった父と筆談を始めた。

「お金も、まして、本も沢山に与えてもらった身としましては、お金も、学業も成らず、まことに耳の痛い家訓でございます」。そう笑いながら手渡すと、父はハハハと笑って、「いや、そうではなく、僕自身の今年の決意を言っただけです」と言った。

 父がなぜ、例年のようなお正月にしなかったのか、謎が解けた気がした。

 続けて父は、「華美は驕りとなる。かと言って過度の倹約は心が貧しくなる。合理的な節約を考えることは陰徳への道。たとえば、自分の作った作物を人に差し上げれば喜ばれる。又、自分の作ったもので自分の身も養える。これも陰徳への道。今朝のお節は、まことに豊かに整えられて、こんなうれしい正月はありません」と言った。

 平成24年。父にとっては積陰徳元年。私には「陰徳という宿題」をもらった年。この宿題は年頭の誓いにしては重い。重すぎる。けれど、私は父の子孫。父の後ろ姿についてゆけばいいのだ、とも教えてくれる。

父と新しい年、積陰徳元年はこうして始まった。

*須磨離宮公園「松竹梅の正月飾り」
正月飾りは、伝統的な日本の迎春の美。公園の中門広場では、縁起のよい松竹梅や景石を配した特大(W4m×D2.6m×H3.3m)の盆石が飾られ新春を寿ぎます。
期間:平成23年12月17日~平成24年1月15日(来年はぜひご覧下さい)
神戸市立須磨離宮公園:神戸市須磨区東須磨1-1 TEL078-732-6688



「もも家」のフードレシピ

チーズ 餅の磯辺

 大きな災害に見舞われた平成23年。沢山の思いを残したまま平成24年の新しい年が明けました。みなさまにはどのようなお正月をお迎えになられたでしょうか。被災地で新年をお迎えのみなさまには、改めてお見舞いを申し上げます。

 さて、1月も小正月を過ぎると、再びの日常が戻ってまいりましたが、お正月のお餅が残ったままというお宅もおありでしょう。1月のレシピは、そのお餅で、ちょっと目先の変わった磯辺巻を作ってみました。

 作り方はとても簡単。お夜食に、お酒の後に、お三時の虫やしないに、ぜひお試し下さい


CCF20120126_00001.jpg 

 材料
角餅  1個50gくらいのもの。人数分
溶けるタイプのスライスチーズ  お餅1個につき1枚
濃口醤油  適宜、お好みで。
焼海苔 お餅1個につき1/2枚
・用意する器具  テフロン加工のフライパン。ぜひともご用意下さい。

 作り方
CCF20120126_00002.jpg①お餅をスライスして、角切りし、フライパンの中で、チーズの大きさになるよう、くっつけて並べます。火が中までとおると、お互いがくっつきます。フタをして、少し焼き色をつけ、ひっくり返します。

②濃口醤油を小さじ半分くらい、塗り、上にスライスチーズをのせ、フタをして、チーズが溶けるまで待ちます。

③チーズの上に、醤油をお好みで数滴。チーズがトロリとして熱いうちに、焼海苔ではさみます。対角線に切って三角形にしたほうが食べやすいですよ。

もう、これで出来上がり。簡単ですが、一度食べると、クセになるおいしさ。新しいスタイルのお餅の磯辺です。

さて、初春とは名ばかりの風の冷たい毎日です。みなさま、お風邪などひかれませぬよう大切にお過ごし下さい。
それでは、今年もどうぞよろしくお願いいたします。


編集部より:大仁さんのフードレシピについては、このサイトで多数見ることができます。また、この記事の著作権は大仁浩子さんに帰属し、イラストの著作権は横江節子さんに帰属します。著作権の侵害にご注意ください。

〔もも家〕
TEL:078-391-2466
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-20 前川ビル2F
(三宮駅の北、徒歩5分)


スポンサーサイト