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バンクーバーの総カツ

久米先生顔イラスト ブログ
 3月10日付け読売新聞朝刊のスポーツ面に『メダル5個「よくやった」』というタイトルで、日本オリンピック委員会JOCがバンクーバー五輪について総括したという記事が掲載されていました。

 これによれば、JOCの情報戦略部門は当初のメダル獲得総数を「最高6個、最低で2個」と予測していたらしく、この予測からすると今回の結果は一定の評価に値するとのことから、「よくやった」という評価になったとのことです。

 それでは皆さん、ここで問題です。

「日本のメダル5個獲得は、本当に“よくやった”と思いますか?」

「俺はよくやったと思うよ。だって、日本の選手はほとんど国の援助なしでさぁ、よくここまで強くなったよ」

「そうかなぁ?お隣の韓国なんか金メダルの数が国・地域別で5番目に多いんだぜ。同じ東洋民族として、今回の日本のメダル数は決して褒められないなぁ」

 さぁ、皆さんはどちらの意見に同調しますか?実は、このように意見が割れる原因は、議論している双方のもともとの論点がズレていることが多いのです。

 「論点思考」(東洋経済)の著者内田和成氏は、「論点思考とは自分が解くべき問題を定義するプロセス」だと言います。われわれの周りには様々な問題点が山積していますが、その問題点を問題視しようとするとうまくいかない、というのです。内田氏は、経営の神様と呼ばれたピーター・F・ドッラガーの言葉を借りて「われわれが犯すもっとも重大な過ちは、間違った答えを出すことではなく、間違った問いに答えようとすることだ」と述べています。つまり、現象として起こった問題に目を奪われることなく、本当の問題を解決するために議論すべき論点を明確にしなさい、というのが内田氏の意見です。

 さて、論点思考を理解していただいた上で、「日本のメダル数」問題をもう一度考え直してみましょう。日本の今回のメダル獲得種目はすべてスケート種目です。では、スキー種目はなぜ皆無なのか、という論点設定はどうですか。

 もちろん惜しい種目もありましたが、少なくとも素人の我々には、なぜ多くのスキー種目がメダルに届かないのか疑問です。逆に、メダル獲得ならずとも、代表全員の水準が世界最高レベルであることを証明した種目もあります。それはフィギアスケート男女です。参加選手全員が8位以内入賞です。これはすごい!では、なぜそんなことが可能となったのかという論点はどうですか。

 新聞の記事を読んだだけで、すべてが理解できるとは決して思っていませんし、記事に載った内容だけが実際の記者会見で語られたとも思いません。が、今回のJOCの記事は、明らかに敗北宣言に、私には映ります。

「メダル5個は予想範囲であるから“よくやった”。でも、同じ東洋民族として韓国に先を越されたことは残念だ」という論調は、ネガティブ・キャンペーンです。今回の総括の論点がブレています。リーダーならば「韓国には○○では負けた。しかし、××では寄せつけもしなかった。したがって、今度こそ○○は雪辱を誓い、××は一層引き離す」程の勢いが記事から感じられるようにJOC幹部は記者会見すべきではありませんか。そうでなければ、今後の日本国民のオリンピックマインドは、決して向上しません。

「われわれを困らせるもの、その問題そのものではなく、その問題に我々が持つ考え方である」。

 古代ギリシャ・ストア派のエピクテトスが放ったこの言葉の論点を、リーダーはしっかり噛みしめるべきだと思います。


スポカツ48 001

久米秀作・帝京平成大学 (日本体育協会公認アスレティックトレーナー)

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