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NHK朝のドラマで話題の水木しげるの世界。その妖怪話と大学芋の関係は? 残暑厳しい折に、記憶から消せない話を。

妖怪よりも怖いもの(文・料理/大仁浩子・もも家店主、イラスト/横江節子・神戸垂水区在住)
イラスト04
 まったくもって、幼い頃にヒサエおばさんが話してくれた妖怪の怖さといったら。今でも心の隅がゾワゾワする。

 おばさんは私の母さんのお姉さん。昔、赤十字の看護婦さんで、戦争の時は大陸で働いていた。「マンシューはゴッカンの地じゃけんね(満州は極寒の地)」というのが、おばさんの口癖。

 おばさんはゴッカンで胸の病気になり、戦争が終わる前に日本にソーカン(送還)されたらしい。おばさんは、庭の「離れの家」に住んでいて、時々マスクをして、私の家にやって来た。

 おばさんは、家の中に住んでいる妖怪を見つけ出すのがとても上手。たとえば、私がご飯粒をボロボロこぼしたり、残したりすると、その様子を見て、「そんなことをすると、米粒おばけが出てくるのよ」と言うのだった。真夜中になったら、私がこぼした、たった一粒のご飯粒は、何千粒というご飯粒に増えて、小さな白い頭を振りながら、「飯粒をこぼしたのはどこの子じゃ」と口々にはやしたて、布団のまわりをグルグル回るというのだ。「のっぺらぼうの白い顔に口だけついとるんよ。おばけは畳の目の間から、ジョロジョロ、ジョロジョロ、這い出してくるけんね。ご飯を粗末にせんようにしんさい」と言った。その話は、夢に出てくるほど怖く、寝る前に、米粒がもしや落ちてはいないかと、何度もたしかめたものだ。

 その頃住んでいた家には長い廊下があった。その廊下の雨戸の開け閉めは子どもの仕事。夕方、私が戸袋から雨戸を引き出すと、妹がその戸の桟(さん)を持って、廊下の端までガラガラと押してゆく。雨戸を閉め切ると、部屋はまたたく間に夜になった。雨戸は、朝、開ける方が余程面倒な仕事だった。まだ頭ははっきり目覚めていないし、コットリという雨戸の木錠は素直に動いてくれない。

 嫌々ながら腹立ちまぎれに、いい加減に雨戸を繰ると、「戸袋の中にいる、“手”が出て来て、雨戸をバタンと斜めに倒して、次の雨戸が入らんようにする。雨戸は最初の一枚目を、きちんとまっすぐ戸袋の奥へ立てかけんとね」と、おばさんは、妖怪“雨戸の手”の話をする。“雨戸の手”は、雨戸を乱暴に扱わなければ現れないおばけ。特に一枚目の雨戸を見張っている、という。

 暗くて狭い戸袋の底は、覗き込んでもよく見えない。いや、見るのが怖くて見なかった。しかし、“雨戸の手”は戸袋にいた、と思う。たしかに、おばさんの言う通りに、一枚目の雨戸さえ、“雨戸の手”が気に入るように丁寧にまっすぐたてれば、次々と雨戸はすんなりと戸袋に収まってくれた。ヒサエおばさんの妖怪“米粒おばけ”と“雨戸の手”は、しつけや家事の合理的方法を説くのに、まことにもって、怖いながらも適切な話に仕上がっていた。

 毎年、9月になると、坂の上にある「了円寺」という寺で、法話があった。夕方になると、庭石の向こうから、「今夜は、用心棒に連れてくよ」とおばさんから声がかかった。幼い私など、何の助けにもならないと思うのだが、ただサクマドロップを一缶買ってもらえるのがうれしかった。一粒ずつ口の中でとかしていると、やがてお坊様の話が終わった。お寺の境内は、すっぽりと黒い闇に沈んで、石段のそばの門燈がぼんやりとわずかに灯っているばかり。

「おばちゃん、コワイね。ユーレイ出るね」と、つないだ手を握り返すと、

「なんの。ユーレイなんか、コワイもんか。ほんまに恐ろしいのは人間よ。よほど人間のすることの方がおそろしい」と言うのでした。母さんとおばさんの生家は広島。おばさんはマンシューから帰ってピカドンという爆弾にあいました。人間のすることで一番おそろしいのはピカドン、とおばさんは言い「ピカドンは広島を全部焼いたんよ。草も木も、一本も生えんと言われとったんに。一番先に、夾竹桃の花が咲いたんよ。焼け野原に赤い花が咲いとった。それで、あの花は人の血を吸うて咲いたんやろな、いうたんよ」。

 おばさんの懐中電灯が、丸い輪をつくって夜道を照らしていました。

「おばちゃん、ピカドンは米粒おばけや雨戸の手より、コワイおばけ?」と聞くと、「そりゃそうよね。よっぽど怖いことよね」と言って、おばさんはそれっきり黙ってしまいました。

 今年の夏は終わりそうもありません。9月になってからも炎暑が続き、草も木も枯れたように立ち尽くしています。けれど公園の夾竹桃だけは、燃えるような赤い花を咲かせています。おばさんが「妖怪よりも怖い」と言っていた、あの花です。

*兵庫県立美術館「水木しげる・妖怪図鑑」展
会期:2010年7月31日~10月3日(日)
   午前10時~午後6時 休館は月曜日
場所:神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
電話:078-262-0901
交通:JR神戸線灘駅下車、南へ700m
   阪神電車岩屋駅下車、南へ500m



「もも家」のフードレシピ

鬼太郎的大学芋

イラスト03 兵庫県立美術館で、「水木しげる・妖怪図鑑」展を見てきました。入り口の大きなポスターには、~神戸に妖気じゃ!~と叫びながら、目玉おやじがお出迎え。館内に入ると、妖怪88(人?)と鬼太郎に登場するオールキャストが原画で次々に現れます。そこで、9月のレシピは、妖怪的な大学芋をご紹介します。妖怪的と言いますのは、妖怪がぬっと現れるように、誰かが「大学芋が食べたいなあ」とつぶやいたら、5分もしないうちに、大学芋が目の前に現れる、そんな早業レシピをお届けします。目玉おやじのように、紫芋を太くカットして作りました。不思議なことに、紫芋で作りますと、まるで、こしあんの和菓子のようになりました。紫芋は、揚げると和菓子に妖怪変化しますようで。

■大学芋の作り方


 材料

紫芋 1本250~300g
片栗粉 大さじ1.5杯
白ゴマ 適量
はちみつ 適量
サラダ油 揚げ油に

 作り方
 妖怪的早業でお試し下さいませね。

①紫芋は7ミリくらいに丸く輪切り。
②厚めに表の皮をむく。
③水に、1分ほどさらしてアクぬき。
④キッチンペーパーに並べて、塩をパラパラ。上からキッチンペーパーで押さえて、水気をとる。
⑤ビニール袋に片栗粉を入れ、④の芋を入れ、ガシャガシャ振って薄く粉をつける。
⑥フライパンにサラダ油を入れ、まだ油の温度が低いうち(100℃)に入れ、中火弱にして、ゆっくり揚げる。竹串がスッと入ったら出来上がり。キッチンペーパーで油をとり、クローバーはちみつをたっぷりからめ、白ゴマをパラリ。
イラスト01イラスト02

 鬼太郎的大学芋、これにて出来上がり。

 残暑が続いております。
 皆様、どうぞご自愛下さい。
 それでは、また10月にお目にかかります。


編集部より:大仁さんのフードレシピについては、このサイトで多数見ることができます。また、この記事の著作権は大仁浩子さんに帰属し、イラストの著作権は横江節子さんに帰属します。著作権の侵害にご注意ください。

〔もも家〕
TEL:078-391-2466
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-20 前川ビル2F
(三宮駅の北、徒歩5分)
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