スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
人参が嫌い、ピーマンが嫌いという子どもは珍しくない。卯年の今年、ウサギと人参の話から、その人参を使ったジャムのレシピを紹介します。子どもも大好き。お試しください。

絵本のうさぎ (文・料理/大仁浩子・もも家店主、イラスト/横江節子・神戸垂水区在住)
 
イラスト04
 新年になって初めての会議に出かけた。会議が開かれるそのビルは3階以上が貸会議室になっていて、廊下を中心に左右に部屋が並んでいる。ロビーを兼ねた広い廊下に背もたれのない楕円形ソファが7個ほど、一列に置いてあった。どこかの一室はママたちの集まりだろうか。退屈した幼稚園生くらいの子どもたちが5~6人、廊下に出て遊んでいた。

 そのうち、そのソファを飛び石代わりに、ピョンピョンと順に渡り始めた。小さい子は跳びそこねて床に落ちて泣いているし、傍を通る大人たちにぶつかったり、転んだりと大はしゃぎ。あたりはすっかり子どもたちのプレイランド。足の弱ったお年寄りが端のソファに坐っておられたが、危険を感じて、その場を離れてしまわれた。

 さて、と意を決して、子どもたちに近づいて、なるべくびっくりさせないよう、ニッコリしてこう聞いた。「これは何ごっこをして遊んでるの? 面白そうね」。子どもたちは、大きなおばさんから急に話しかけられ、年長らしい男の子を中心にひとかたまりになった。

 「ピョンピョンしてオモチロイ」と3歳くらいの女の子が跳ねながら答えた。

 「何ごっこしてたの? おばさんは、イナバの白ウサギごっこかなあと思ったけど。この白ウサギの話、知ってる?」

 「ウサギじゃないよ」とさっきの女の子が答え、「そんな話、知らん」と年長組らしい男の子がやっと答えた。

 「そっかあ、知らないんだ。そのウサギさんの話だけどね、さっきボクたちがソファの上をピョンピョン跳び越してたでしょ。あんなふうに、白ウサギさんは海の中のワニザメ君たちを騙して、一列に並ばせてね、その背中をピョンピョン跳んで向こう岸に渡ったのよ。そしたらワニザメ君が怒ってウサギさんの毛を全部むしって赤裸にしたんだよ」。毛をむしりとる件のところで、子どもたちはギョッとした顔をした。

 「血、でた?」と女の子が言う。

 「そうよ、痛い、痛いって泣いてたの。そこへね……」。そこまで言うと、年長の男の子が、「あっちへ行こう」と皆を引き連れてあっという間に階段を降りていった。

 物語は、そこから大国主命が登場して、白ウサギを救い、教え諭すという佳境に入るところだったのに。残念。

 そして、ロビーは再び静けさを取り戻した。家に帰って娘に話すと大爆笑された。

 「いくらニコニコ顔で近づいても、ピョンピョン跳んだら皮を剥がされたって話なんだから、子どもには婉曲なおどかしでしょ。それに因幡の白兎は神話でしょ。私だって、鳥取の白兎海岸の立札で知ったんだから。今の子のウサギのイメージはピーター。絵本のピーター・ラビットよ」と言う。

 たしか、因幡の白兎の話は、遠い昔に母が童謡にもなったその話を、歌いながら教えてくれた話だった。その話を何度も歌い、そして決まってこう言うのだ。

 「だからね、この話は、人を騙してはいけません、という話」。こうして子どもの時に聞かされた日本の昔話は、教訓話が多い。こういうことをすると、こんな目にあう、と戒める。舌切り雀のように舌を切られたり、カチカチ山のタヌキは背中に火傷をしたり。それは身体の痛みの想像も伴っていて、もう決してそんなことはしません、と子どもの心に道徳を沁み込ませていく。

 だから、同じウサギが登場するイギリスの「ピーター・ラビット」の小型絵本を見つけた時は、子どもより私が夢中になった。そこには、子どもの気持ちと同寸大のピーターが生き生きと描かれていたのだから。

 ピーターは決してお利口で大人しいウサギではない。母親ウサギが、私の留守中、決してマクレガーさんの畑に行ってはいけません。お前たちの父さんはあそこで捕まってミートパイにされたんだからと、言い残しても、約束を破り、畑の野菜を盗んで、お腹いっぱい食べる。

 子どもにとっては、いけないことをするのは大きな冒険。マクレガーさんに見つかって追われる場面はハラハラ、ドキドキ。鬼ごっこやかくれんぼの遊びをピーターと体験しているのだろう。畑中を逃げまわって、疲れと不安でやっと辿り着くのは、母さんの待つ暖かい家。幸福感に溢れている。そんな悪戯好きなピーターは1週間で上着を2枚、靴を2足も失くすのだが、それさえも温かく許されるところも子どもたちが安心してピーターの冒険を体験できるのだろう。教訓めいた言葉はないけれど、絵本の追体験は子どもの心を育てるだろう。なにしろ、娘たちがまだ字の読めない頃から毎晩読まされていたピーター・ラビット。娘たちにも忘れられない絵本の一冊となっている。

 けれど今、娘たちにひとつだけ白状しておかなければね。字が読めないことを幸いに、ピーターの話を脚色、構成したことを。

 その頃、幼い娘たちは、人参とピーマンが大嫌い。どんなに細かく刻んでも、選り分けて食べる。そこで、少し脚色した。「ピーターはマクレガーさんの畑で、レタス、さやいんげん、はつかだいこん、を食べました。そして大好きな人参を見つけてポリポリ、もっと大好きな緑色のピーマンを見つけてカリカリカリカリ。ああ、なんて人参やピーマンはおいしいんだろう、とひとり言を言いました」と読み聞かせた。

 今、考える。これはきっと、教訓的な昔話で育てられた私の性だろう。絵本でしつけをしようと、いきおい込んでた若い母親でした。あの頃の私は。

*神戸国際会館、こくさいホール
JR三宮駅、南へ3分。神戸を代表するホール。地震により解体後、1999年に再オープンした。「音響家が選ぶ優良ホール100選」のひとつ。
3月20、21日には、熊川哲也・Kバレエカンパニーが「ピーター・ラビットと仲間達」を公演。絵本と同じ精巧な着ぐるみの動物たちがコミカルに動き、ソロ、パドドウ(二人の踊り)、ジャンプ、ピルエット(旋回すること)のバレエを踊る舞台はきっと夢のようでしょう。


「もも家」のフードレシピ

ピーター・ラビットの人参ジャム

イラスト03 ピーター・ラビットは、英国の女性作家、ビアトリクス=ポッターの絵本『ピーター・ラビットのおはなし』に登場する子ウサギ。
 いたずら好きのピーターは、ある日、マクレガーさんの農場に忍び込み、畑の人参をムシャムシャ、ポリポリ。それをマクレガーさんに見つかってしまい、逃げる途中で自慢の青い上着を失くしてしまいます。翌日、探しに出かけると、その青い上着は……。
 冬の夜長、子どもたちと、ピーターの冒険物語の旅に出かけてみましょう。そして、2月のレシピはピーターの好きな人参をジャムにしてみました。
 トロリと美しいオレンジ色のジャムに、人参嫌いの子どもたちも、きっと夢中になることでしょう。


 材料
人参    大 2本(1本180~200g)
リンゴ     1個
リンゴジュース 1缶
レモン     1個
砂糖      1カップ
塩       ひとつまみ

イラスト01 作り方
①人参は、薄く皮をむき(皮は捨てずにキンピラに)、4つ割にして、水から5~6分、下ゆでします。竹串がやっと通るくらいの固さです。

②レモンは、お湯でワックスを洗い流し、表皮をおろし金ですりおろしておきます。

③リンゴは4つ割にし、皮をむき、レモンは1/2個の汁を振りかけ、色どめしておきます。

④①の人参をホーロ鍋にすりおろし、リンゴもすりおろします。

⑤そこへ、1カップの砂糖、リンゴジュースを加え、かき混ぜて、10分おいて、火にかけます。

イラスト02⑥煮はじめは、やや強火。アクをすくいとってから、フタをして、中火で7分。その後、フタをとって煮てゆきます。こげつかないよう木ベラでかき混ぜながら煮てゆき、途中、レモンの皮1個分と、レモン1/2個分の汁を入れ、風味づけにします。レモンは、種をとり、フォークで果肉をくずし、フォークをつきさしたまま、ギュッと絞ると、とっても簡単。

⑦煮つまって、鍋のフチがキツネ色になりはじめたら、仕上げに塩をひとつまみ入れ、味を引きしめます。

 これでジャムは出来上がり。
 朝のトーストはもちろん、ホットケーキにもぜひ、おつかいください。人参の臭いもなく、初めて食べた人は人参だとは気づかないほど。
 カロテンなど、栄養豊富な人参。冬にこそ作って食べたいジャムです。
 寒さが続く毎日。くれぐれも、お大切におすごしください。来月、お目にかかる時は春の足音が聞こえてくることでしょう。


編集部より:大仁さんのフードレシピについては、このサイトで多数見ることができます。また、この記事の著作権は大仁浩子さんに帰属し、イラストの著作権は横江節子さんに帰属します。著作権の侵害にご注意ください。

〔もも家〕
TEL:078-391-2466
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-20 前川ビル2F
(三宮駅の北、徒歩5分)
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