スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
いよいよ9月。去り行く夏の思い出は誰にでもあることでしょう。今月のレシピは、その夏の名残、夏野菜をつかったカレーです。ショートストーリーは靴と「走る」こと。ある映画の話とともに味わってください。

運動靴と赤い金魚 (文・料理/大仁浩子・「もも家」店主、イラスト/横江節子・神戸市垂水区在住)

イラスト04 神戸・ポートアイランドにある「アシックス・スポーツミュージアム」で、たくさんのスポーツシューズと、ボロボロになるまで履きこまれたマラソン選手のズック靴を見ていた。見ているうちに、「こんなにも、履いていた人物の気持ちを代弁するズック靴、前にどこかで見たなあ」と記憶をたどって、その映画を想い出した。

 それはもう10数年前に見たイランの映画、「運動靴と赤い金魚」。ストーリーは下町に住む小学生の兄妹のズック靴をめぐって展開する。貧しい家庭に育つ兄と妹には靴がそれぞれ一足しかない。

 ある日、兄はその大切な妹の靴を、市場の帰りに失くしてしまう。満足な仕事もない両親に、靴を失くしたことを告げることができず、兄はある方策を思いつく。

 イランは政教一致の国。小学校でも、女の子は午前中、男子は午後から授業を受ける二部制。それで、朝は妹が、兄のブカブカのズック靴を履いて登校。下校中で兄がそれを待ち受け、妹から靴を受け取り、猛ダッシュ。午後の授業に走り込むという日々を送ることにした。再々の遅刻を見咎められ、罰を受けながら、それでも両親の暮らしを思い、涙ぐましい努力が続いてゆく。

 そして、その毎日の猛ダッシュの走りは、少しずつ少年の脚を強く、たくましく育てていった。そんなある日、兄は妹の靴を拾って履いている女の子を見つける。後を追うと、自分よりももっと貧しい家の有様。その靴を取り返すこともできず、また、一足のボロボロのズック靴を兄妹で共有する毎日。午後の授業に遅刻しないよう、兄は懸命に走る。時間を越えるために走る。貧しい父母と妹のために走る。

 やがて、町のマラソン大会の日が近づいてきた。入賞3位の景品はピカピカの運動靴。兄は妹にそれを履かせたくて、年長の男の子達と走ることを決める。1位ではなく、3位になるために。兄が苦心する、その足元が大写しで画面に映る。金持ちの子はスニーカー、兄は、あの破れたズック靴。

 先頭集団につけて必死の走り込みの後、集団はひとかたまりになってゴール。ところが、皮肉なことに、兄は判定の結果、優勝してしまう。先生や友人の大興奮の歓喜をよそに、兄の落胆ぶりといったら、言葉にも表せないほど。

 物語の終わり、兄は前庭の噴水池の縁に腰掛け、足を冷やしている。その足指の先を、真っ赤な金魚が、コツコツ突いて泳ぎ去る。それは「ほんとうによく頑張ったことね。おつかれさま」と言うよう。幼い兄をねぎらって幾度も寄ってくる。赤い金魚の美しいシーンだった。

そして、その向こうの遠景に父親の自転車。その荷台には兄妹のための真新しい靴箱が2個、しっかりくくりつけてあった。それで映画は終わる。

見終わって、この映画は子どもの目線で作られた子ども映画だったと思っていた。ところが、こうして何年たっても、ふと運動靴を見る度に、素直で素朴な感動がこみ上げてくるのだ。

ミュージアムには、オリンピックやスポーツ競技で華やかな記録を残した靴が何足も何足も並んでいる。どの靴にも、どの靴にも、選手の苦闘と苦悩が染み込んでいる。それが胸に迫ってくる。

人は何のために走ってきたのだろう、と思う。自分の記録、世界の記録を塗り替えるため? それも、きっとそうだろうと思う。けれど、人は誰かのために走るのではないか、と思う。自分を越えて走るとき、人は美しい。結果の記録ではなく、その瞬間の精神のありようが、美しい。イランの少年のズック靴とミュージアムの靴は、私に、そのことを伝えてくれる。

*アシックス・スポーツミュージアム
 スポーツの進化を目で見て楽しめる体感ミュージアム。世界で活躍した選手たちの使用した靴のコレクションは秀逸。
住所:神戸市中央区港島中町7-1-1
交通:ポートライナーで三宮乗車、中埠頭下車。徒歩2分。無料




「もも家」のフードレシピ

夏の名残の野菜カレー

イラスト03
  夏の盛りには、あれほど賑やかだったアブラ蝉に代わって、夕方近くになると、ツクツクホウシ蝉が鳴き始めました。

「ツクツクオーシ」と鳴くのは、夏が過ぎるのが「つくづく惜しい」と鳴いているのだとか。

 そこで9月のレシピは、名残の夏野菜を使った「夏野菜カレー」。

 バターの風味を添えてまろやかで味わい深いカレーを作りました。


 材料
玉ネギ   1個
トマト  大2個
なす    2本
人参    1/2本
生椎茸  大3枚
アスパラ  2本
コーンスープ 1缶(300g)
ニンニク  1片
しょうが  親指大 1片
カレー粉  大2
ガラムマサラ  小1
塩こしょう  少々
醤油    小2
バター   大2
水     400~500cc
サラダ油  適宜

 作り方
イラスト01①テフロン加工の深めのフライパンにサラダ油大1を入れ、みじん切りのにんにく、しょうがを入れ、火をつけ、香りを油に移す。

②その中に、玉ネギの薄切り、人参のいちょう切りを入れて、水分を飛ばすようにいため、軽く、塩こしょう。

③なすは、皮が硬くなってきたので、縦に縞状に皮をむき、小口からいちょう切り。生椎茸もなすと同じ大きさに切る。アスパラは、軸の下方の皮をむき、コロコロの一口大に切る。トマトは半分に輪切りにし、中のタネをとり、ザク切り。

④③をすべて、フライパンに入れ、軽く、塩こしょうして、水分をとばしながら、いため合わせる。フタをして弱火で5分、むらし煮する。

イラスト02⑤カレー粉を入れ、香りがたつようにいため、ガラムマサラなどの香辛料、醤油を入れ、コーンスープを1缶、加える。濃度を加減しながら、水400~500cc加える。火を消して、バター大2を加え、味をなじませて、出来上がり。

さて、先日訪れた「アシックス・スポーツミュージアム」では、イチロー選手とアシックスが共同で開発製作したイチローオリジナルの靴がズラリ。

俊足の彼に合わせて、靴もどんどん軽量化。現在は250gの軽さ。

そういえば、イチロー選手の記録を支えているのはカレーだとか。

神戸でも、“朝イチカレー”が流行りました。
 

編集部より:大仁さんのフードレシピについては、このサイトで多数見ることができます。また、この記事の著作権は大仁浩子さんに帰属し、イラストの著作権は横江節子さんに帰属します。著作権の侵害にご注意ください。

〔もも家〕
TEL:078-391-2466
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-20 前川ビル2F
(三宮駅の北、徒歩5分)




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