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神戸の画家、小磯良平さんの薬用植物の絵。そして彼岸花。この季節、レシピはあなたにやさしいサムゲタンです。
編集工房ソシエタスになって最初のレシピです。


小磯良平の植物画
 (文・料理/大仁浩子・「もも家」店主、イラスト/横江節子・神戸市垂水区在住)

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 一冊の美しい本を買った。173種の薬用植物が細密なデッサンと端々しい色づかいで描かれている。その本は『小磯良平の描いた薬用植物画』。一頁ずつ丹念に見た。葉の形、根の姿、花の色、実の光り、木や枝の指し示す空間の行方。それをたどっていくうちに、その草や木があった場所、はるか昔の風景へと想いは広がっていく。

 幼いころに育った家は、町とは名ばかりの里山。この本のほとんどの草や木があった。自然は身近にあり、草や木は遊び友だち。食べられる葉や実は子どもたちへの自然からの贈物。春の野苺、秋の山イチヂクを口にした喜びは、今も舌先に残っている。そして、毒のある植物、薬になる植物を教えてくれたのは母、でした。

 秋の夕暮れ、畑の土手には彼岸花が赤く燃えるように咲いていました。

「彼岸花は、なつかしい花よ。母さんの里の田の畦には、この花が火事のように咲いとってね。そのころには田んぼの稲も金色に実って、それは、それはきれいな景色。一度、見せてあげたい景色なんよ」と言った。

 家の近くの彼岸花は数本ずつ咲くばかり。ところが墓地を囲む土塀の端や墓のそばには群れて咲く。

「この花は死人花。触ると手が腐るぞ」と子どもの間では忌み嫌う花でした。けれど、それは母さんの好きな花。友だちが家に帰った夕暮れ、私はそれを両手いっぱいに摘んで帰りました。そのときの母の「まぁ」と言ったきり驚いた顔といったら。「毒花を、まあこんなに」と言いながら、石鹸で入念に手を洗わされたものでした。一晩だけ、花瓶に生けられた一束の花は、翌日、畑の隅に、赤い色を鮮やかにしたまま捨てられていたのでした。それなのに、母は、自分の生家から球根を持ち帰り、庭の隅に植えて、毎年、花が咲くのを楽しみにしていたのです。そして、決まりごとのように、こうつぶやくのです。

「彼岸を忘れようにと、突然咲き出す花やね。この花は、ハミズハナミズ、と言うんよ。ハミズは葉を見ず、ハナミズは花を見ず。つまりね、親の葉は、子どもの花を見ることがなく、子の花は、自分を咲かせてくれた親の葉を知らん、ということなんよ。さびしい花やね」と。

 母は幼くして、父親を亡くし、その面影を知らずに育ちました。だから、自分の身を重ねていたかもしれません。あるいは、これから先、我が子の成長をどこまで見守り、見届けることができるのかと不安がよぎっていたのかもしれません。母は赤く華やかに咲く、この花の一生の哀しさを、毎年、想っていたのかもしれません。何事につけても「さびしいねえ」という人でした。

 悲しみの遺伝子が人より多かったのかもしれないと、『植物画』の65ページの彼岸花を見つめています。そのページの解説には、この花の薬用、「催吐や去痰の効果と、鱗茎のデンプンでつくった糊は、伸びがよく虫害を防ぐ効果があるため、表具師が用いる」と記してあります。その絵には、愛らしい丸い球根も2つ、描き添えられていて、その先に若々しい薄緑色の葉のようなものが芽生えようとしている。この絵の中で、花は葉に葉は花に出会っているように描かれているのです。

 小磯良平は、一枚の絵の中に、その植物や木の四季の姿を同時に描きこむ構図を、しばしば好んで描いている。薬用にする植物画であれば、その薬効をとしての花・葉・実・枝・根を詳細に書く必要があったのかもしれませんが、それを同時に同空間に見ると、それぞれの植物の一生をたどっている想いがするのです。それぞれが力強く、誠実に、その植物らしく生きている様子が伝わってくる絵の数々。

 私には、生きる喜びの遺伝子が多いのかもしれませんが、しみじみと秋の夜長にふさわしい美しい1冊の本です。

*小磯良平美術館
神戸を代表する洋画家。小磯良平の画業を伝える美術館。アトリエも当時のまま移築してあり、庭には薬用植物も植えられている。
交通:JR神戸線「住吉」駅下車。六甲ライナーに乗り換え「アイランド北口」下車。


「もも家」のフードレシピ

もも家の蔘鶏湯(サムゲタン)

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「薬用植物画」に描かれている食材から、韓国の薬膳料理、蔘鶏湯をつくってみました。本場の作り方は、ヒナ鶏1羽のお腹の中に数種の薬用食材ともち米をつめて、煎じるように煮出し、スープを薬として飲む滋養食。それを、もも家風に、手軽に、薬膳のおかゆにつくってみました。冷え症の方や二日酔いの方々に是非お試し下さい。


 材料
鶏・もも肉 大きめのもの2枚
米 1.5C
鶏がらスープの素 大1
【食材A】
高麗人参1本
ニンニク 2片
干したナツメ4個
ショウガ 2片
*高麗人参:植物画の本ではオタネニンジン。日本には、将軍、徳川吉宗が朝鮮より取り寄せ、種を広めた。将軍より賜ったので御種(オタネ)と言う。



 作り方
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①もも肉は皮・脂を丁寧に取り、お酒(または焼酎)を振りかけ、しばらく(2~30分)おく。

②塩・コショウして熱湯で2~30秒茹で、霜ふりしておく。

③薬用になる食材Aを土鍋に入れ、水1,000CC入れ、静かに20分煮出す。

④鶏肉を入れ、アクを取りながら煎じるように煮る。

⑤米を洗って、すぐ④に入れ、鶏がらスープを加え水を加えながら、おかゆ状になるまで煮る。

⑥おかゆをお椀に注ぎ、1口大に切った鶏肉をのせ、白ゴマ(適宣)、ゴマ油(ほんの1滴)を加えます。

 ゴマ油を1滴垂らすと高麗人参の土臭い匂いも消え、体の温まるスープのようなおかゆです。高麗人参以外は手に入りやすい食材ですから、鶏がゆとしておつくり下さい。
 心にも体にも優しい、もも家風のサムゲタンです。秋の夜寒、どうぞお試し下さい。
お風邪など召されませぬように。それではまた。


編集部より:大仁さんのフードレシピについては、このサイトで多数見ることができます。また、この記事の著作権は大仁浩子さんに帰属し、イラストの著作権は横江節子さんに帰属します。著作権の侵害にご注意ください。

〔もも家〕
TEL:078-391-2466
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-20 前川ビル2F
(三宮駅の北、徒歩5分)



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