スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
 今月の食材はなんと「文旦(ぼんたん)」。九州、特に鹿児島の人には馴染み深い。その前に、あのタニカワ(タニガワではなく)俊太郎さんの「ことばあそびうた」が登場します。味わいが文旦に似ているかも。

ことばあそびうた
(文・料理/大仁浩子・「もも家」店主、イラスト/横江節子・神戸市垂水区在住)

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 さて、詩の感想文の宿題を思い出したついでに、娘にも「そんな宿題を出された覚えがあるかな」と聞いてみた。「あった、あったよ」と言う。そして、すらすらと暗誦しはじめた。それは谷川俊太郎の詩集『ことばあそびうた』からの二篇の詩。

 ひとつは、「はなののののはな」

 はなののののはな
 はなのななあに
 なずななのはな
 なもないのばな

 この宿題は、“漢字あてはめクイズ”だったらしい。平仮名を漢字に変えて暗誦してくるというもの。つまり「はなののののはな…」は、「花野の野の花 花の名なあに なずな菜の花 名もない野花」となる。

 ちょうどその頃、私達は、夫の転勤先の郊外で暮らしていた。社宅は、広大な田畑の中に建っている五階建てのアパート。春には、菜の花のあざやかな黄色がどこまでも続いていた。娘は、ベランダの柵越しに菜の花を見ながら大きな声で暗記したのだった。やがて、その「なのはな」は娘の原風景となった。

 「世界で一番好きな花は菜の花」という素朴で飾り気のない娘に成長し、パソコンのハンドルネームにも「nanohana」が登場している。

 そして、もう一篇は「いるか」。

 いるか いるか
 いないか いるか
 いないいない いるか
 いつなら いるか
 よるなら いるか
 またきてみるか

 いるか いないか
 いないか いるか
 いるいる いるか
 いっぱい いるか
 ねている いるか
 ゆめみて いるか

 この宿題は、「さて、この詩の中に水族館で見かけるイルカは何頭でてくるでしょう」という数字クイズ。この詩からは、「ことばあそびうた」のタイトルにふさわしく、水族館の「イルカ」と動詞の「居るか」が綯交ぜになっていて、日本語の掛詞の面白さ、楽しさが伝わってくる。娘は、一度読んだきりで「イルカは9頭」と即答。一連目に4頭、二連目で5頭と言う。

 「そうかなあ」と私。「(居るか、居ないか、居ないか、居るか)で始めると、一連目にはイルカは現れてこないけどなあ」と言うと、「そんなのヘンや。イルカは泳いでいるもん」と、すでに娘の頭の中には「イルカは、グングン泳いでいる」ということだった。この詞の「イルカ」と「居るか」は、読み込めば読み込むほど限りなく変換し、揺れていく。しかし、娘の「グングン泳ぐイルカ」の想像力の前には、掛詞も、まして何頭いるかなど、数ももうどうでもよいことに思えてくる。

 答案用紙には、「イルカは9頭です」と、エンピツで書かれていた。

 娘と詩の思い出話をしていると、谷川俊太郎氏があるインタビューに答えておられる記事が目にとまった。それは、試作の姿勢について「ほとんどの詩人が自己表現にこだわり、自分の感じ方、考え方を押し出すのが詩だと思っている。僕は、あまりそういうところがなくて、詩を読む人や聞く人を楽しませてあげたいというのが先にある」と、語っておられた。

 「詩を楽しんで」という想いは、この二篇からも十分に伝わってくる。娘は、小学生の時代に、この詩に出会い、言葉の不思議さに気づいた、と言う。詩は不思議だ。心の奥にしまいこまれた、その言葉は、時々ふっと日常の暮らしに立ち上ってくる。そして、その言葉には羽でもはえているように、一瞬にして、想像の世界へと、飛び立たせてくれる。

 「数ある宿題のなかでも、詩の宿題はよく覚えているわ」と娘は楽しげに言った。「言葉で遊べるなんて、何て幸せなこと」と私は言った。

 その日、母娘は「ことばあそびうた」で言葉遊びを楽しみ、菜の花畑の道を、どこまでもどこまでも、歩き続けたことを思い出していた。

*相楽園
神戸で初夏の庭を楽しむなら、相楽園をおすすめします。この庭は、池泉回遊式の日本庭園。つつじやさつきの花の名所です。池に移築された「川御座船の船屋形」は重要文化財。
神戸市立相楽園:神戸市中央区中山手通5-3-1
TEL.078-351-5155


「もも家」のフードレシピ

文旦のゼリー

CCF20120602_00001.jpg 3月にさしあげた、イカナゴのくぎ煮の御礼にと見事な文旦が届きました。

 さっそく、黄色の厚い皮をむいて、口に。サクサクした果肉は香り高く、上品な酸味と甘味のバランスが初夏にふさわしい果物です。

 友人に「ありがとう。大好物なのよ」と電話すると「果肉もおいしいけど、皮も捨てないで、食べてね」とのお返事。それで、今月は試行錯誤の末にたどり着いた「文旦の皮のゼリー」のレシピをお届けします。







 材料
文旦 3個(1個400~500g)
レモン 1個
白砂糖 皮の分割の7割(約700g)
グラニュー糖 適宣


 作り方
CCF20120602_00002.jpg①文旦は、表皮をごく薄くむきます。

②4つ割にして、果肉だけをはずします。
 このとき、なるべくしろいスポンジ状の部分を残します。この部分がゼリーになります。はずした果肉は……食べます!
 さらに縦割りにして(つまり1/8の細さ)4つに切り分けます。

③大鍋に熱湯を用意し、③の皮を入れ、浮かせないように木杓子で沈めながら、再沸騰させ、ふきこぼれないよう1分ゆでる。
 ザルにとり、冷水で10分さらす。
 この熱湯で1分、冷水10分を3回繰り返しアクと苦味をとる。
 その後、一晩水にさらしておく。

④ザルにとり、水気をざっと絞り、総量を計り、その量の7割の砂糖を用意する。

CCF20120602_00003.jpg⑤セラミックコーティングの深鍋に④を入れ1/3量の砂糖で煮る。煮詰まらないよう、底から杓子で大きく返しながら煮る。
 水気がなくなれば、次の1/3の砂糖を入れ、煮詰まって、アメ状に砂糖がからんできたら残りの1/3の砂糖を入れる。

⑥レモンの皮をおろし金ですりおろし、果汁1/2個分も振りかけて香りづけする。
 この頃になると、文旦の皮は半透明のゼリーに変身していきます。

⑦粗熱をとり、表面がやや乾いてきたら。グラニュー糖でお化粧し、くっつかないように、紙の上で並べ、自然乾燥させます。

 できあがりをおみせできないのが残念ですが、ほろ苦い甘さと、やわらかな食感のゼリー。

 口に入れた友人たちが、「文旦の果汁とゼラチンでつくったの?」と問いますが、「いえいえ、文旦の皮だけ」と答えると、2度ビックリの文旦ゼリー。

 文旦は高級な果物ですが、店頭でみかけたら是非、文旦ゼリーお試し下さい。

 皮も身も全部おいしくて、とってもエコな今時の果物です。

 それでは、また次回お目にかかります。


編集部より:大仁さんのフードレシピについては、このサイトで多数見ることができます。また、この記事の著作権は大仁浩子さんに帰属し、イラストの著作権は横江節子さんに帰属します。著作権の侵害にご注意ください。

〔もも家〕
TEL:078-391-2466
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-20 前川ビル2F
(三宮駅の北、徒歩5分)



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2012/06/02(土) 09:51:08 | まとめwoネタ速neo