スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
心を洗うような音色。誰しも一度は経験していることだろう。被災地でいくつも行われてきたコンサート。心に染みいり、自ずと涙がにじみだしてくる。今月のショートストーリーは「青葉の笛」。そしてレシピは豚肉のソテーに山椒をピリリと効かせたものです。

青葉の笛
(文・料理/大仁浩子・「もも家」店主、イラスト/横江節子・神戸市垂水区在住)

CCF20120721_00000.jpg 雨音がする。雨が降りだしたようだ。夕方少し立て込んだ店も、早くにお客が引いてひっそりしている。

「さてと」、と山椒の実を取り出した。朝、その緑の鮮やかさと摘みたての香気に誘われて実山椒を2箱も買ってしまったのだ。山椒は、あのトゲのある木から実を摘むのも大変な手作業。そしてさらに、小枝から小粒の実だけをはずすのも根気のいる仕事。でも本当のおとを言えば、これが結構楽しい。手を動かしながら、気持ちはしんとして、あれこれと思いを巡らす楽しい時間なのだ。

 1箱分の実を摘み終えた頃、夜の闇を縫うように、サックスの音が流れてきた。近くのビルの窓から聞こえてくるのだが、それが、どの店のどんな人が吹いているのか、今もわからない。数年前初めてサックスの音が聞こえてきた時、その音はとてもひどい音だった。ピーとかボーッとか音符がバラバラに飛んでくる。サックスは音をつなげて吹くのがなかなか難しいものだとつくづく思ったものだ。その人(おそらくどこかの店のマスターらしい)が最初に取り組んだ曲は「ハッピーバースデー」。Happy birthday to you……というあの歌。誕生日に来店したお客様に即興で吹いて喜んでもらおうということだと思う。

 一年も過ぎた頃に、その歌は完璧なメロディーとなって風に乗って流れてきた。そして去年。あの東北に震災があってから、その人の演奏曲目に2つの曲が加わった。それは「見上げてごらん夜の星を」と「ふるさと」。これらの曲は東北で再生を願う人々が口ずさみ、復興のテーマソングとなった歌のひとつ。それが今夜も流れてくる。

 震災から1年以上も経つというのに「フクシマ」は終息の糸口さえみつかっていない。こんな雨の夜には、「ふるさと」を口ずさみながら東北の方々はご自分をはげましておられるのではないかと、同じように震災に遭った町から想っている。

 そして、また想う。「平家物語」で伝えられる“青葉の笛”も今夜のように、夜の闇を縫って源氏の陣営にも届いたといいう事を。

 舞台はここ兵庫。源氏に追われ、都落ちした平家は、いよいよ「一の谷」で対戦することになった。その戦の前夜、平家の陣では清盛の弟、経盛が管弦の宴を催した。その席で息子の敦盛が奏でた笛は「青葉の笛(銘=小枝(サエダ)」。敦盛は笛の名手。その澄んだ音色は、戦に荒れた心を慰め、心を洗う美しさだったという。それは源氏の陣にいた関東武士・熊谷直実の耳にも届き、深く心に響いた。

 そして決戦。敗走する平家は、沖で待つ平家船へ逃れようとした。敦盛も海上へと馬を進めている時に源氏方の直実に呼び戻された。直実は敦盛をとらえ、討とうとしたが、敦盛の幼なさ、公達としての誇り、自らの宿命を粛々として受け入れる健気さに、一度は手をゆるめ逃がそうとする。しかし、源氏の追手はもう背後にあり、終に、敦盛を討ってしまう。その時、敦盛の箙(エビラ)の中からこぼれ落ちた笛、それが青葉の笛。直実は、この若武者が、昨夜の笛の名手であったことに気づく。敦盛16歳。兜をとればお歯黒に染めた口元と薄化粧。文武にすぐれ、気品をたたえた美しい公達。直実は、このような若者を打たねばならなかった己を恥じ、戦の虚しさとおろかさを悟ったという。

 直実は後に出家。法名、連生。一生をかけて敦盛を供養した。直実に人としての慈しみの心を呼び起こさせたのは「青葉の笛」の美しい音色だった、と物語は言う。

 笛は人の吹く息が音に変わる楽器。その故なのか。人の心の奥底にある溜息や嘆きや叫びなど、奏でる人の感情がそのまま音に変わって耳に届く。聞く側の心をゆさぶる。敦盛の笛は魂に訴えかける音色だった。

 そのように今夜のサックス「ふるさと」も人の絶えた夜の街に高く低く流れてゆき、私の心を遠い遠い人のところまで想いを運んでゆく。

 どうぞ、東北の方々に、一日も早い平穏な日々が訪れますように。

 「笛の音に 波もよりくる須磨の秋」 与謝蕪村

※須磨寺
源平興亡の舞台となった須磨。須磨寺には敦盛の「青葉の笛」や甲兜などゆかりの品が数多く展示されている。
アクセス:神戸市須磨区須磨寺町4-6-8
     TEL:078-731-0416


「もも家」のフードレシピ

豚肉のソテーに山椒ソース

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 初夏の台所は手作りする食材が次々に届き、忙しい季節です。毎年、実家の庭の夏みかん、あんず、梅で、マーマレードや果実酒をつくります。ちょうどその頃、山椒の実も出回ります。瑞々しい小粒の実は、山里の新緑の色を写しとってきたような鮮やかさ。

「山椒は小粒でピリリと辛い」のたとえもあるように、その辛さは料理の名脇役。冷凍しておけば、一年中、その爽やかな辛さが楽しめます。山椒は店頭に並ぶ期間も短いのでお見かけになったら、この山椒の実も手作りの佃煮や、冷凍して保存しておかれますよう。

 今月はその山椒料理のあれこれを。

CCF20120721_00002.jpg◆山椒の実の冷凍保存の方法から

①山椒は、ざっと水洗いして、大きめのボールに水を張り、その中で小枝をはずします。実の先にある針くらいの細い軸は、食べても口に残りませんから、そのままにしておきます。実はザルにあげておきます。

②鍋に湯をわかし、塩少々入れ、沸騰してきたら①のザルの実を一度に入れます。中央にアクが出ますから、それを取り除き、再沸騰したら、火を止め、ザルにとり広げて、うちわであおぎ、急速で冷まします。

③粗熱がとれたら、冷凍用のビニール袋に入れて、冷凍庫へ。

――その冷凍した実山椒を使って
◆豚肉のソテー

 材料

豚肉、ステーキ用、人数分
調味料(塩、こしょう、片栗粉、サラダ油)
付け合せの野菜(トマト、レタスなど何でも)
今回は、マカロニとキュウリのマヨネーズ和え。ミニトマト(中粒くらいのもの)をつくりました。

 作り方
CCF20120721_00003.jpg①豚肉は筋切りをし、表面に軽く切り込みを入れます。塩・こしょうをして、両面を片栗粉で薄くはたいておきます。
 フライパンにサラダ油をひき、両面をこんがりと焼きます。ミニトマトの皮に十文字に切れ込みを入れ、フライパンの隅で、ころがしながら焼くと皮が自然にむけて、付け合せにピッタリの焼きトマトになります。

②山椒ソース。このソース、何をかくそう偶然の産物なのです。山椒の実の佃煮をつくる途中、ちょっとお味見をしたら、その煮汁に山椒の香りと、程よい辛さが移って、なんとも美味しい。鶏肉や豚肉を焼いて、その上にかけて食べたいと、急遽半分はソース用に取り分け、残り半分は、そのまま煮詰めて山椒の佃煮にした次第です。

――というわけで、「山椒の佃煮」の作り方です。

 材料
山椒の実 1箱(約500g)*下準備は上述のとおりです
しょうゆ 180cc
みりん 80cc
酒   100cc
熱湯  100cc

 作り方
① 鍋に分量のしょうゆ、みりん、酒を入れ、沸騰させてアルコール分をとばし、粗熱のとれた山椒の実を一度入れ、弱火で煮込む。早く煮詰まりそうなら、さし湯100ccを加える(このとき、ソース用として取り分ける)。

②あとは弱火で静かに炊きあげ、佃煮にする。

 山椒は、あの小粒の実を小枝からはずすのが大変ですが、これから1年さまざまの料理に活躍する、まさに日本のハーブ。ぜひ、山椒を冷凍なさって下さい。

 レシピのアップが遅くなり、「山椒なんてとうの昔に終わったよ」という皆々様、どうぞお許し下さい。そして是非、来年おつくり下さい。

 もも家の冷凍山椒レシピ。イワシの煮付けにパラリ。アナゴの柳川鍋にパラパラ。ちりめん山椒には1つかみパッと、どうぞ、さまざまにおつくり下さい。

 それでは、またお目にかかります。暑さが続いております折、ご自愛下さいませ。

編集部より:大仁さんのフードレシピについては、このサイトで多数見ることができます。また、この記事の著作権は大仁浩子さんに帰属し、イラストの著作権は横江節子さんに帰属します。著作権の侵害にご注意ください。

〔もも家〕
TEL:078-391-2466
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-7-20 前川ビル2F
(三宮駅の北、徒歩5分)




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