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カツ発な授業


久米先生顔イラスト ブログ 実は今月は、わが大学のような教員養成校にとっては教育実習校回りで大忙しの月。
 今年は保健体育教育実習を希望する学生数が思いの外多くて、そこでたくさんの先生の手を借りて総出で実習校へ菓子折り持って頭を下げに行くことになりました。

 私も、先日ある高校へ実習訪問に行ってきました。その高校の門をくぐると、ちょうど体育の授業へ参加する生徒たちが私の目の前を横切ってグラウンドの方へ走り出して行くところでした。みんなお揃いのジャージ姿です。

コラム9 












その中の何人かの生徒たちが私に「おはようございます」とあいさつをしてくれました。そんなうれしい先制攻撃を受けながら、私は体育教官室へと向かったのです。

 教官室では事務から私の来校を知らされた若い先生が出迎えてくれました。その室には数名の先生の机が向かい合わせに置かれていて、窓の横には小さな応接セットが並べられていました。決して大きな部屋ではありませんでしたが、きちんと整頓された居心地のよい部屋に見えました。出迎えてくれた若い先生は、早速実習生のY君について「実習、楽しそうですよ」と報告してくれました。これに対して、私は「それはありがたいことです」と心よりお礼を述べました。

 今回の訪問の主な目的は、指導をしてくださっている先生方へのご挨拶と研究授業への参加です。Y君の研究授業のテーマは「2年生に対するバレーボールの指導」で、授業設定は7時間中の2時間目となっていました。私は、先生方への挨拶を一通り済ますと、彼が書いた指導案のコピーを片手に持って早速体育館へ向かいました。Y君はもうすでに準備を整えていて、生徒が来るのを待っていました。遠目でしたが、Y君はやや緊張しているように見えました。研究授業には、体育の先生ばかりではありません。他の教科の先生や教育実習生も来ます。教頭先生や校長先生が来られる学校もあります。Y君が緊張するのは無理もないことでした。

 私が教育実習に行ったのはもう30年以上前のことです。ほとんど覚えていません。でも、楽しかったことだけは覚えています。しかし、勢いばかり目立ってその他は何もできなかったこの私を“先生”と呼んでくれた生徒たちは、果たしてこの“先生”をどう評価していたのでしょうか。何もできないだけではありません。指導してくださった先生方もさぞやびっくりなされたことでしょうが、当時私は試合に負けたけじめにと頭を丸刈りにしていたのです。まだ青さが目立つ、刈りたての頭でした。実習に髪を染めたまま行く学生は、わが大学にはいません。心構えとして論外です。でも、青刈りにしていく学生もいません。

 破天荒な自らの実習を思い出していると、Y君の授業が始まりました。Y君の「おはよう」の声が体育館に美しく響きます。と同時に生徒たちの顔が一斉にY君に向けられます。座っている姿は、両腕で足を抱え込んでしたりお胡坐をかいていたりと様々ですが、耳はY君の一言も聞き洩らすまいと、欹てているように見えました。そして、静から動へ。生徒たちは流れるように思い思いの場所に散らばり、ボールを高々と上げ始めました。

 授業を終えたY君は、はにかみながら私の方へ近づいてきました。
「今日の出来栄えは自己採点で何点?」と聞くと「20点ぐらいですかね」とY君は答えました。
「ずいぶん厳しい採点だなぁ」と私は応じ、無事に研究授業を終えた彼にねぎらいの言葉を一言二言かけました。

 校門を出た時「今日は久しぶりに良い一日だったなぁ」と、少し雲行きが怪しくなってきた空を心配しながら、考えていました。


久米秀作・帝京平成大学 (日本体育協会公認アスレティックトレーナー)
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