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学士様の復カツはあるか

久米先生顔イラスト ブログ 「学士様なら嫁にやろ」。この言葉を私に教えてくれたのは世田谷の大叔母でした。明治生まれの彼女は、生前大学を卒業したての私にこう言ってお祝いの言葉を述べてくれたのです。ところで“学士”って何? 何の事だかわからないのは、意外に当の本人たちかもしれません。これには、昨今の大学を卒業することへの価値観が低下してしまったことが原因にあるように思えます。

 その国の高等教育進学率が15%までをエリート型、15~50%までをマス型、50%以上をユニバーサル・アクセス型というのだそうです。これに従うと、我が国は大学・短大・高等専門学校進学率は2008年度で56.2%、専門学校も含めれば78.0%ととなり、いまやユニバーサル・アクセスの段階にあるということになります。

15スポーツカツ 001 実はこのことを私に教えてくれたのは(社)日本私立大学連盟[編]「私立大学マネジメント」(東信堂 2009)です。本書のなかで、とくに私が興味を覚えたのは「学士教育」について書かれた部分です。

 皆さんもご存じのように、大学は文部科学省が省令として設定した「大学設置に最低必要な基準」、いわゆる「大学設置基準」に準拠して設置されています。この基準は1956年に定められ、それ以降数多くの改定を経て現在に至っているわけですが、現在もこの設置基準の在り方と今後の方向性についての議論は続けられています。

 そして、最近(2008年12月)では諮問機関である中央教育審議会が「学士課程教育の構築に向けて」という答申を発表しています。内容は「学部段階での教育を『学士課程教育』と称して、従来の学部学科等による縦割りの教学体制は学生主体の教育活動を推進する際に妨げとなっているとして、その是正を求め『学士課程教育』の概念が広く理解されるよう」求めたものになっています。

 この答申を私なりに恣意的に読み解くと、どこの学部学科でどんな専門教育を受けてきたという前に、大学全体としてどんな学生を育てようと考えているか、大学のポリシーを明確にしなさい、と要望しているように読めるのです。さらに、答申では「知識基盤社会における大学の量的拡大(ユニバーサル段階)を積極的に受け止めつつ社会からの信頼に応え国際通用性を備える「教養教育」と「専門基礎教育」から構成される学士課程教育の構築」をするように要望しています。これも私なりに読めば、専門バカでは駄目だぞ、立派な教養を身につけて、世界のどこでも通用するような教養ある市民となるよう学生を教育しなさい、と読めるのです。

 ここで、「教養」というと1980年代の大学で行われていた教養教育を連想しますが、ちょっと違います。本書執筆者の一人である水野氏によれば、「高大接続教育」(高等学校と大学を結ぶ教育)の根幹をなす教育のことだと言います。

 実は、わが国には戦後教育体制を6・3・3・4年生に移行させる際に戦前の中等教育の後半にあった「教養教育」を「高等教育・大学」の前半に組み入れた経緯がありました。これを今日的希求、つまり大学入学前教育として復活させることで、高校生に大学で学ぶ意義や価値を理解させ、その後の学生生活を有意義で且つ高いプライドを保持できるものに導いていく原点とするのです。

 もし、この高大接続教育が有効に機能するならば、高校生はまた違った形で大学を選ぶようになるかもしれませんね。つまり、単なる職業訓練学校的機能しか待たない大学よりも世界に通ずる教養を身につけることができる大学の付加価値を理解するようになるでしょう。これはいずれ社会でも評価されるようになるはずです。

 こんな大学を卒業した人間ならば「嫁にやろか」と、二人の娘を持つ私も思うわけです。


久米秀作・帝京平成大学 (日本体育協会公認アスレティックトレーナー)
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