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アスリートの股関節痛 Femoroacetabular Impingementに対する股関節鏡視下手術 

 小職は、アメリカのSteadman Hawkins Clinic の股関節鏡視下手術年間400例の症例数を誇るDr Marc J Philipponを訪問し、10日間手術外来見学ならびにキャダバートレーニングでご指南をうけました。

 股関節鏡視下手術の適応、アスリートに多い股関節インピンジメント(Femoral Acetabular Impingement FAI)の診断、股関節痛の原因となる他病変との鑑別、治療方法の立案と関節鏡視下手術の実際、さらにメディカルリハビリテーション、アスレチックリハビリテーションを習得しました。

 アメリカの現状と、帰国後実際に行っている、FAI診断から手術、メディカルリハビリからアスレチックリハビリまでの治療をご紹介いたします。

 アスリートの股関節痛は、診断が明確にされずに、保存的治療に抵抗し、治療に難渋することも少なくなくありません。股関節痛の原因としてはTable1にあるような疾患外傷があげられます。

 なかでも股関節インピンジメント(Femoral acetabular impingement 以後FAI)はGanzらが2001年(1)に報告して以来、股関節痛を引き起こすインピンジメント病態として、診断治療が進歩してきました。

 FAIは、大腿骨骨頭から頸部のオフセットの骨形態異常からインピンジメントを引き起こすCAM impingement、寛骨臼蓋の骨棘や形態異常によるPincer Impingementからなり、両者が合併していることが約86%と報告されています。(2)
 両者がインピンジすることにより、関節唇損傷を来たし、次第に軟骨損傷をきたします。

[診断へのアプローチ]
病歴:まず詳細な病歴を聴取することが大切です。
活動制限として、中等度から明らかな疼痛、重労働時の疼痛、15分以上歩行すると疼痛、座位からの立ち上がりでの疼痛を訴えます。
運動制限としては、ランニング ジャンピング スタートとストップ動作での疼痛

[理学所見]
スペシャルテスト
FABER test(Flexion-Abduction-ER ) FAIの97%が陽性。
Anterior Impingement Test  FAIの90%が陽性。

[画像診断]
単純レントゲン写真: 
立位正面およびクロステーブル軸写にて、PincerならびにCAMの評価を行います。CE 角を測定して、臼蓋形成不全の有無、Cross-Over sign で臼蓋の後捻の有無を確認します。クロステーブル軸写では、アルファ角(正常値<50°)を測定し、CAM impingementの有無を確認します。

MRI:
関節唇損傷の評価は、1.5テスラ単純MRIで、偽陰性が80%と報告されており、有用ではありません。1%ガドリニウムを股関節内に注入した後撮影する MR arthrogramが偽陰性率が8%にまで下がり、非常に有用です。 今まで、原因のわからなかった股関節痛で Groin Pain Syndromeの範疇として考えられ、治療に難渋した症例のなかにこのような病態が含まれている場合があります。

[治療]
NSAIDやリハビリによる保存療法に、3カ月以上抵抗する場合には、股関節鏡視下手術を考慮します。

股関節鏡の実際
 フラクチャーテーブルで、牽引を行い、前外側ポータルと前方ポータルを作成して、寛骨臼と骨頭の間の鏡視を行います。関節鏡視下に関節唇損傷を確認し、Pincer Impingementがあれば、関節唇を寛骨臼からはずし、Rim Trimingを行った後、関節唇を再縫着します。

 次に牽引をはずし、関節包内関節外鏡視、すなわち大腿骨頭から頸部のオフセット部分を鏡視します。CAM impingementが存在すれば、突出した骨軟骨をアブレーダーバーで削り、骨軟骨形成(osteochondplasty)を行います。

 FAIに対する 関節鏡視下手術は、この一連の術式によって、安定した成績が得られるようになってきています。プロスポーツ選手のFAIに対しても、積極的に手術を行うようになり、45人のプロスポーツ選手のFAIに対して関節鏡視下手術を行い、93%が元のレベルに復帰したと報告しています(2)。

 わが国では、診断学が普及しておらず、また股関節鏡視下手術はテクニカルディマンドな手術であり、一般的ではありません。

 スポーツ整形外科医の視点からみて、股関節痛で スポーツパフォーマンスが低下している選手には、有用な診療アプローチの一つとして期待されます。

 詳しくは動画も掲載しています。私のブログまで。

1)Ito, K, Minka, Leunig, M, Werlen, S, Ganz, R. "Femoroacetabular impingement and the cam-effect. A MRI-based quantitative anatomical study of the femoral head-neck offset." J Bone Joint Surg B 2001 83(2) 171-6
2) Philippon, MJ, Stubbs, AJ, Schenker, ML, Maxwell, RB, Ganz, R, Leunig, M "Arthroscopic management of femoroacetabular impingement: osteoplasty technique and literature review Am J Sports Med 2007 35 (9) 1571-80.
3) Philippon M , Schenker M, Briggs K and Kuppersmith D
Femoroacetabular impingement in 45 professional athletes: associated pathologies and return to sport following arthroscopic decompression. Knee Surg Sports Traumatol Arthros 2007 15(7) 908-14


内田宗志
産業医科大学整形外科
日本体育協会公認スポーツドクター
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