FC2ブログ
 
         スポーツ医学とスポーツ現場をつなぐコミュニケーションブログ
 
九つ負けて、ひとつカツ

久米先生顔イラスト ブログ
 11月も半ばを過ぎました。この時期は、特にボールゲーム競技では今シーズンの総括が行われているのではないでしょうか。いよいよ決勝戦、と胸をわくわくさせているチームもあるでしょうね。逆に、今シーズンは入れ替え戦だぁ、とまだまだ気の抜けない状況にあるチームもあるでしょう。いずれにしても、負けられない一戦が迫ってくるのが、この11月後半から12月前半にかけてなのです。

 負けられない一戦と書きましたが、逆に負けても良い一戦というのは果たして存在するのでしょうか。トーナメント戦であれば、こんな悠長なことは言っていられません。負ければシーズンが終わりですからね。では、リーグ戦の場合はどうでしょうか。確かに、一敗しても優勝のチャンスが残ることもあり得ます。しかし、だからと言って「今日は負けてもいいよ」と試合に臨むコーチや選手はいないでしょう。

 ところが、ビジネスの世界で「負けても良い」と言っている人がいます。(株)ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏です。カジュアルウエアの小売店「ユニクロ」の創業者と言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。

スポーツカツ33 001 彼は自著「一勝九敗」(新潮文庫)のなかで、「当社のある程度の成功も、一直線に、それも短期間に成功したように思っている人が多いのだが、実態はたぶん一勝九敗程度である」と書いています。現在のユニクロ成功、成長を見れば、たいての人は全部勝ってきたのだろうと考えそうですが、柳井氏は「多くは失敗」と言っています。

 実際、本書には、彼のたくさんの失敗例が書かれているのです。会社を大きくしては失敗、海外に進出しては失敗、新しい業種に参入しては失敗等々です。こんな経験から彼はこう続けます。「…失敗するのであれば、できるだけ早く失敗する方が良いと思う。早く気づいて、失敗したということをひとつひとつ実感する、そこが一番大切」。ファーストリテイリングとは、早い(ファースト)小売(リテイル)からきているそうです。つまり、いかに早く顧客のニーズを汲取り、売るかがこの商売のすべてだと、彼は言います。彼の経営理念の中心には「スピードこそ商売や経営に欠くべからざる大事な要素」という哲学が貫かれているのです。“失敗”にもスピードを求めているわけです。

 柳井氏と同様に、スポーツの世界でも「失敗は早い時期の方が良い」と言います。大事なゲームで失敗されて、それで負けるようなことがあっては困るからです。では、いつ“失敗した”という実感を与えるのが良いでしょうか。前述したように、「負けて良い、失敗して良い」ゲームは、私は無いと思います。結果として失敗した時が、指導のタイミングなのでしょう。問題は、どのようにこの失敗を実感させるかです。本人が分かっていれば一番良いのですが、そうでない場合、つまり本人は失敗したとは思っていない場合が一番厄介です。あなたが監督だったら、どのように指導しますか?

 私は、指導する際の“言葉”、特に“褒める言葉”と“叱る言葉”に気を使います。その使い方を“食べ物”に例えると、「褒める言葉は、ナマ物、叱る言葉は煮物」とこんな風です。つまり、選手を褒めるときは、できるだけ早く褒めなさい。褒め言葉は鮮度が命。逆に、叱るときはじっくり自分の中で言葉を煮込んで(吟味して)叱りなさい。そうすると、相手には味がじっくりしみ込んだ言葉が届くよ、とこんな具合です。

 失敗経験は、確かに早い方が良いかもしれません。しかしその指導には、じっくり時間をかけるべきだと思います。


久米秀作・帝京平成大学 (日本体育協会公認アスレティックトレーナー)

スポンサーサイト



コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://msm08.blog96.fc2.com/tb.php/858-b28fccc1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック